本田八夏

MagicBar 猪虎亭 マスターのブログ

異常な事態

街角に看板

日本正常心理行動研究所

とあった。

バス停のすぐ横。
グラスファイバーでできた綺麗な支柱2本に支えられちょうど高さ2メートルのあたりに掲げられていた。

その支柱がアーチをえがき、真下にステンレスでできたテーブル。
そのテーブルの上には何やらスーパーのお買い得クーポンが一枚置いてあり、クーポンには50センチ四方くらいだろうか透明の四角いケースがすっぽりかぶっていた。

透明ケースの中はもちろん見たい放題よく見える。

クーポンの"すべて90%OFF" という文字が目につく。 

テーブルには直接文字が大きく書かれている。これは相当目立つ文字だ。

" ご自由にお持ち帰りください 有効期限 老朽化するまで"

その少し下あたりだろうか、やけに小さくこう書いてある。

※但し、触った後の責任はすべて触った方にあり、当方には一切責任はございません。


初日、いったい何人の人が近づいて見た事だろう。
静かな街にしては中小企業が立ち並ぶ割と人通りの多い場所。

その一日目は誰も透明ケースに触れようともしなかった。
私はちょうど向かいにあるお店の店員なので24時間というわけにはいかないがかなりの長時間
監視できる状況であり、なにかしら不思議な好奇心にかられ神経のほとんどをそちらにそそぐようになってしまった。
私は帰宅時、道路工事のおじさんに話しバトンタッチするかのようにおじさんに監視を頼んでみた。
次の朝出勤してくると道路工事のおじさんは私に
『夜中は誰もさわらなかったよ。』

私の心は  クッソー  と  あーよかった が両立した。

2日目、3日目と神経を研ぎ澄ませる毎日は続いたが、
誰もかれもが興味を持って近づけど 透明のやつを持ち上げようとする人間はいなかった。

4日目、5日目と進むにつれ私の心は

誰か!誰か!とにかく誰でもいいから勇気だせよ! とうねりだす。
そして6日目にいたっては私は透明のやつを さわれん君と呼ぶようになっていた。
愛かもしれない!

7日目

なんということだろう!
7時45分に出勤 いつものように現場に立つと
さわれん君とクーポンはなくなり、そこには張り紙がしてあった。

※通行の方にお詫び

紙の素材のため日差しにより色あせ老朽化してしまったので仕方なく調査を終了させていただきます。


うわー!!なんてこと! いつ?? いつのまに?
見たかったな~>< みたかったわ~もうほんまに!
いつ撤去したんやろ!工事のおっちゃん見てない? えっ 知らん! あっそう><
くやしいわー!!

そう思った。

それから更に三日後のことである!
さわれん君がある!!!

あいかわらずテーブルには

" ご自由にお持ち帰りください 有効期限 老朽化するまで"
※但し、触った後の責任はすべて触った方にあり、当方には一切責任はございません。

さわれん君の中には   美しいみずみずとした ミカン が5個。

いつ? えっ? 理解に苦しんだがあることを悟る。
設置を見られてはいけない研究だ!そのいでたちがもって帰る帰らないの精神状態に影響を及ぼしては
いけないことに懸念して秘密裏に進めておられるのだと。

プロの仕事だ!

でもいいじゃないか。また楽しみが増えた!あのスリルが蘇る!わくわくする。

さあいざ初日!この大パノラマスペクタクルに私は心躍らせた!

4日目まだ  5日目まだ、、、、、、、、
だが今度は前とあきらかに違う。 中のミカンがぐちょぐちょになっていく様が、さわれん君越しにはっきりわかる。
例でいくとあと二日ほどで老朽化認定のはず。
やはり誰一人としてもって帰らんか!

うわっ!しくじった!注意はしていたもののよもや5日目に撤去されているとは。
あざやか日本正常心理行動研究所!

あとにさんにちだろうと高をくくっていた私の失態である。
チキショー!!と叫んだがそこはそれ 奴らはプロ。いたしかたない。

ミカン撤去あとには例によって張り紙
※通行の方にお詫び
有田の素材のため日差しにより色あせ老朽化してしまったので仕方なく調査を終了させていただきます。

う~ん 納得。

こうなれば また次に期待してしまうのが人のサガというもの。
案の定 支柱・テーブルのセットはそのままだ。

次の日である。日をおかずたたみかけてきた!
これも人の心理を計算してのことか。
私の記憶が正しければ日に平均200人は興味津々で物をじっくり眺めている。
クーポンの時よりミカンのほうが人気があった。
中には勇気をもって触ろうとした人もいた。最後の一線・恐怖に勝てなかったのだろうか
断念する若き勇者の姿もちらほら。。。。。

今日、さわれん君の中に入っていたのは
高級ズワイガニ 一匹一万円 二日以内にどうぞと添えてある。

おまえいけよ。 そういうおまえこそいけよ。と今までで一番の話題になっていたが誰一人。
やはりそういうものなのか!人はここで躊躇するものなのか!
この一連の出来事、記憶を私は後世の日本に伝えるべく日記にしたためることにした。

ズワイは瞬く間に腐敗。二日目を待たずして闇のかなたに音もなく撤去されていた。

今思い起こせば、ズワイ撤去後2~3分の出来事だったのだろう。
愛しの"さわれん"の中に

一匹のハムスターがいた。

" ご自由にお持ち帰りください 有効期限 老朽化するまで"
※但し、触った後の責任はすべて触った方にあり、当方には一切責任はございません。


これはかわいい^^
さすがに持って帰るだろう。子供にねだられた大人なんかはわが子かわいさにはたの目も気にせずいくはず!
今日でフィニッシュだろう。しかもこれは一年や二年では死なん。
決着か。だが但し書きが気になる。触ればなにが起こるというのだ。いや!気にしすぎ、ただの注意書きか。

4日目、、、、、、、とんでもないことに気づいた!   エサは????

もうすでにそのとき少しゴールドをおびた白毛並みの愛くるしいハムスターはヨロヨロになり
口を何かに近づけるような動きで痙攣している。
次の日、死んでいた。

だがまだそのまま。   一週間、、、、、、まだそのまま
からだは朽ち果てすでに腐敗が進み、、、、さらに一週間、、、そのまま

一ヶ月、、、、、、虫たちに食われすべて天に帰った。

あくる日撤去されていた。

※通行の方にお詫び
生きているねずみ素材のため日差しと現代の事情により老朽化してしまったので仕方なく調査を終了させていただきます。


あれから何日たったことだろうか、、、
曇りだがにわかに日差しが顔を出す明るい朝、さわれん君の中に人間の赤ちゃんがいた。












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阿刀田高さんが好きでよく読みました。
素人短編コンテストに出そうかと思ってブラック&恐怖をテーマに
原稿用紙一枚くらいの作品を10作くらい作ったものです。

そもそも 怖くなくてはいけないわけですからどこかしら精神的な恐怖が感じられなければなりません。
想像させること = 全部語らない  ということだと思います。

上のタイトルは 心の賞味期限

他には、本物の眼球を移植された一眼レフカメラの話しや世界の果てがすべて滝になってる話し。。。
原稿がないので思い出しだけどまた書きます。

本日の怖い話し 心の賞味期限 いかがでしたか。

なんとなくぼんやりしたでだしから、笑い話かシュールな話しかわからない展開をし、そこから上手に怖いとこへ落ちたと思います。

本田八夏